記事・インタビュー

三重県津市で、100年以上にわたり高齢者の生活と医療を支えてきた社会福祉法人高田福祉事業協会。
附属診療所を中心に、養護老人ホームや特別養護老人ホーム、ショートステイなどを併設し、治療にとどまらず、その人らしい日常や人生の最終章までを見据えた「寄り添う医療」を実践してきました。
現在、高田福祉事業会附属診療所では、これまで積み重ねてきた思いや診療体制を次の世代へ託すため、所長候補および勤務医の募集を行っています。
本記事では、診療所の成り立ちや医療に対する考え方、実際の働き方について、理事長の高林光曉さまと、所長の町野良紀先生にお話を伺いました。
<お話を伺った方>


100年の歩みを次の担い手へつなぐ
Q: まず初めに、法人の成り立ちを教えてください。

高林 理事長
当法人の原点は、大正10年に高田本山の門前で「三重養老院」を立ち上げたことにあります。全国で31番目の養護施設として誕生し、県の事業ではなく、民間の養護施設としてスタートしました。
今では創設から100年以上が経ち、三重県内でも最も長い歴史を持つ法人となっています。
Q: 診療所を開設することになった背景や当時の状況は、どのようなものだったのでしょうか。

高林 理事長
診療所を開設したのは昭和54年のことです。当時は、「社会福祉法人に診療所は必要ない」というのが、国や県の基本的な考え方でした。施設を利用されている高齢者の方も、一般の家庭で暮らす方と同じように、具合が悪くなれば外部の病院を受診すればよい、という認識だったんです。
しかし、当時の理事長や職員は、その考えに疑問を持ちました。ここは単なる施設ではなく、利用者の方々にとっての「終の棲家」。だからこそ、住み慣れたこの場所で、安心して介護や医療を受けられる環境を整えたい。そうした思いを胸に、県との交渉を重ねてきました。
その結果、社会福祉法人としては三重県で初めてとなる診療所を、この場所に開設するに至りました。利用者の暮らしを第一に考えた判断だったと言えます。
Q: 今回、医師を募集することになったきっかけを伺えますか。
高林 理事長
所長の町野先生を含め、現在在籍している医師は、長くこの診療所を支えてきてくださいました。そうしたなかで、診療体制をこの先も安定して守っていくには、次の世代へバトンを渡していく時期に来ていると感じるようになりました。
利用者の方々がこれからも安心して暮らせる環境を守るために、新たに医師をお迎えしたい。それが、今回の募集のきっかけです。
働きやすさには“理由”がある――現場から見えた職場環境の実像
Q: 現在、勤務医は何名いらっしゃいますか?

町野 所長
勤務医は私を含めて2名です。診療の対象は、敷地内にある養護老人ホームと特別養護老人ホームの利用者の方々で、養護老人ホームを私が担当し、特別養護老人ホームはもう一人の医師が担当しています。
Q: それぞれの利用者さんの人数や診療スケジュールについてお聞かせください。

町野 所長
養護老人ホームは5フロアあり、利用者数は各フロア20名程度です。基本的には利用者の方が診療所まで来て受診されますが、外部の専門病院に通院されている方もいらっしゃいます。
点滴が必要な方など状態が重い場合には、直接居室へ伺って診療します。居室を訪問するのは1日あたり10名ほどです。
一方、特別養護老人ホームの利用者は約100名です。回診は毎日ではなく、月に1回以上の定期回診を基本とし、必要に応じて投薬などの対応を行っています。現在の担当医は週3日の勤務体制です。
Q: 利用者の方々に疾患の傾向などはあるのでしょうか。
町野 所長
利用者の多くは、加齢に伴う慢性疾患を継続的に抱えている方々です。そのため、診療の中心となるのは、日々の健康状態の確認や、長期的な視点での体調管理となります。
Q: 今回の求人にあたって、医師の勤務時間や勤務日数などの条件があれば教えてください。

高林 理事長
勤務時間は、原則として9時から17時を想定しています。ただし、「この時間は必ず在席しなければならない」「診察はこの時間帯に行う」といった厳密な決まりはなく、先生方のご都合に合わせて柔軟に調整しています。
勤務日数については、週5日勤務が理想ではありますが、週3日からの勤務についてもご相談いただけます。
Q: オンコール対応もあるのでしょうか?

町野 所長
オンコール対応は半年に1回あるかどうかという頻度で、実際にはほとんど発生していません。
高林 理事長
万が一オンコールが発生した場合も、医師が現場に出向くことはなく、電話で看護師に指示を出す形が基本です。実際の対応は看護師が行うため、夜間の負担は非常に少ない体制となっています。
Q: 遠方から勤務される医師のために、住まいのサポート体制などはありますか。
高林 理事長
遠方からお越しになる医師やスタッフのために、職員宿舎を10室用意しています。居住用としてはもちろん、勤務の合間に書き物をしたり、休憩を取ったりするスペースとして利用することも可能です。
利用者の気持ちに寄り添う“やさしい医療”を一緒に
Q: 私は何度かこちらの診療所に来ておりますが、医師・スタッフともに明るく活気がある印象を受けています。職場づくりで日頃から大切にされている考え方などあれば教えてください。

高林 理事長
創設当初から大切にしてきた思いを、長い年月のなかで職員一人ひとりが受け継いできたことが、今の明るい雰囲気につながっているのだと思います。立場に関係なく、言いたいことを率直に言い合える職場であると自負しています。
私自身、理事長という立場ではありますが、自分を「オーナー」だとは考えていません。利用者の方に心地よく過ごしていただくために、それぞれが役割を担う中の一人にすぎない。そんな気持ちで日々向き合っています。
Q: どのような医師に来ていただきたいとお考えですか。

町野 所長
利用者である高齢者の方々に対して、やさしい言葉遣いや思いやりを持って接することができる方に来ていただきたいですね。
高林 理事長
町野先生のお言葉にもあるように、利用者の心に寄り添い、その思いを汲み取った診察・診療ができる方が理想です。また、セカンドキャリアとして、利用者に寄り添う医療に携わりたいと考えている方も歓迎しています。これまで培ってきた経験を活かしながら、無理のない働き方をしたい方にとって、当診療所は適した環境だと思います。
Q: 勤務の柔軟性が高いため、子育て中のママさん医師にも適した環境のように感じました。

高林 理事長
そうですね、子育て中の医師にも、働きやすい環境だと思います。勤務の調整がしやすい分、ご自身の生活と両立しながら取り組んでいただけます。
利用者の方々への思いと、法人として受け継いできた思いを大切にしながら、診療所をともに未来へつないでいける方に来ていただきたいと考えています。
Q:最後に、求職者の方に働くうえで知っておいてほしい思いや大切にしていることを教えてください

高林 理事長
私たちは、「生活の場」と「医療の場」を切り離さず、ひとつの場所として大切にしてきました。利用者の方々にとって、ここが“第2のふるさと” となるような存在であり続けたいと考えています。
週末には、医師がご家族と面談し、ターミナルケアや終末期の過ごし方について丁寧に話し合う時間を設けています。まれにご家族のご希望で専門病院へ移られるケースもありますが、多くの方はこの場所で最期まで暮らすことを選ばれています。
そうした利用者やご家族の気持ちに寄り添い、日々の暮らしの延長として医療を提供できる方と、これからの診療所を一緒につくっていきたい。それが、私の願いです。
高田福祉事業協会附属診療所
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