夜間在宅で切り拓く〈第三の医師像〉 ②30秒で医師が動く！オンコールDXの裏側

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はじめに

夜間・休日往診代行サービス ON CALL代表符毅欣（ふうたかよし）によるシリーズ記事の第2回をお送りします（前回の記事：医療の空白を埋めるプラットフォームを創る）。
今回の記事では、迅速な夜間往診を実現する上で肝となるDXの裏側を大公開。オンコールは進化しています。

30秒で医師が動く！オンコールDXの裏側

深夜のコールセンターで電話が鳴る。看護師は通話を続けながら患者カルテを開き、症状を三段階で判定。結果は自社EMRに記録され、同時に位置情報をひも付けた医師候補へ一斉に招集通知が飛ぶ。平均して30秒以内に「行けます」の返事が戻り、家族へ到着目安が伝えられる。機械任せに見えて、その裏には看護師の経験則とシステム補助を組み合わせたハイブリッド運用がある。現在は半自動だが、ルーティングAIの試験導入が進行中で、来年には完全統合を見据えている。

ONCALLアプリシステムとは

１　30秒で医師が決まるハイブリッド設計

仕組みの要は三つに整理できる。第一に、看護師が電話を受けると同時に患者カルテが自動表示され、通話を続けながら緊急具合を入力できる案件管理システム。第二に、看護師が通話を終えた直後に発動する医師招集フローだ。登録済み約400名の医師を現在地と勤務希望で絞り込み、最適候補へ招集通知を送る。第三に、GPSを用いた移動時間の概算表示である。到着目安を口頭で家族へ伝え、安心材料にする。難しい判断があれば背後のリーダーが即時サポートに入る。急性呼吸苦の症例では従来より1時間ほど早く診療に着手できた実績がある。〈看護師による即時判断＋最小限のシステム補助〉という組み合わせが、平均30秒の医師決定を支えている。

案件管理システム

２　スマホ一つ、週1回1往診で＋15万円

医師側の導線は驚くほどシンプルだ。アプリで通知を許可すれば招集候補に入り、通知が来たらボタンを押して出動が確定する。勤務前の先輩医師が30分のオンライン面談で在宅急変の勘所とアプリ操作を伝授し、勤務中もチャットで即質問できる。往診は一回あたり2時間前後、週に一度こなすだけで月15万円ほどの副収入になる事例が生まれている。本業では得にくい在宅×急変対応の経験値を短時間で積める点も、若手の関心を集める。来年度には診療ごとに経験値が蓄積し、報酬ポイントが増えるクエスト機能が導入予定だ。

３　データが示す患者と医療機関の安心

電話助言のみで解決するケースは往診の1.5倍に達し、「到着目安がすぐわかって落ち着けた」という家族の声が多数寄せられる。導入医療機関の満足度（NPS）は8.3で、最も多い要望は「到着時間をさらに短縮してほしい」。開発チームはルーティングAIの評価指標を“平均到着マイナス30分”に設定し、速度と精度の両立を狙う。カルテ種別に依存しない設計のため多くのクリニックでも採用が進み、夜間救急搬送の抑制やスタッフ負担軽減が報告されている。

まとめ

看護師の即時判定とシステムによる医師招集が融合し、「電話から30秒で医師が動く」体制が実現しつつある。スマホ一つで参入し、本業の合間に臨床力と副収入を得られる仕組みは、若手医師にとって試してみたい新しい仕事の選択肢だ。次回は、このプラットフォームがどのように成長資金を調達し、医師の信用を事業の推進力に変えていくのかを掘り下げる。

【夜間在宅で切り拓く〈第三の医師像〉シリーズ】

①　医療の空白を埋めるプラットフォームを創る
②　30秒で医師が動く！オンコールDXの裏側　※今回

符毅欣（ふうたかよし）プロフィール

2017年京都大学医学部卒業。虎の門病院で初期研修・泌尿器科の専門研修を開始後、長野市民病院・江戸川病院で臨床経験を積む。日本泌尿器科学会専門医。現在は株式会社on call 代表取締役CEOとして、医療現場と経営の双方から在宅医療インフラの構築に挑み、患者・医療機関・地域社会に貢献するサービス創出に取り組んでいる。