記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。
レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
書評『こどもの血液培養と菌血症 こけつきん11のオキテ』~子どもの菌血症診療を「楽しく深く」学べる一冊!
子どもにおける菌血症診療は、大人とは異なるポイントが多く、血液培養をいつ・どのように採取すべきか、コンタミネーション(混入)を防ぐ手技のコツなど、実はニッチだけれど重要な課題が山積しています。
本書『こどもの血液培養と菌血症 こけつきん11のオキテ』では、これらの問いに対してQ&A形式をはじめとした多様なアプローチで解説。
重症化しやすい子どもの菌血症をいかに見逃さず、確実に診断するか――そのために必要な知識とマインドセットを、楽しみながら学べる内容となっています。
- 書評『こどもの血液培養と菌血症 こけつきん11のオキテ』
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
- 小児科をはじめ、子どもを診る可能性のあるすべての医師
- 初期研修医、後期研修医、総合診療医、救急科医など幅広い層
- 看護師や臨床検査技師など、菌血症診療に携わるメディカルスタッフ
【推定読了時間】
約4~5時間(Q&A形式ながら読み応えがあるため、じっくり読む場合の推定時間)
2.本書の特徴
本書を一言で表すなら、「ニッチだけれど現場でとにかく使える、子どもの菌血症診療の実践書」です。
- ①研修医マッキーとこけつき先生の会話形式
- 物語風に進行する寸劇が挿入されており、「こういうシチュエーション、あるある!」と共感しやすい構成。飽きることなく読み進められます。
- ②実践的なQ&Aが満載
- 血液培養の適応と採取手技、採る量・セット数、コンタミを防ぐための具体的なポイントなど、明日からの診療で役立つ情報が惜しみなく紹介されています。
- ③小児特有の視点を重視
- 大人と比べて「どんなところが違うのか?」「どんな工夫が必要なのか?」が具体的に書かれており、小児特有の悩みどころを解消してくれます。
- ④チーム医療の重要性が随所に盛り込まれている
- 検査室・看護師・医師がどのタイミングで連携を図り、どんなコミュニケーションをとるべきか。血培を核として医療全体の流れを学ぶことができます。
- ⑤豊富な経験とデータに裏付けられた解説
- 子どもの菌血症に長年取り組んできたエキスパートたちの実際の“考え方・悩み・工夫”がわかりやすく言語化されており、ガイドラインに留まらない“生きた知識”を得られます。
3.個人的総評
本書を読んでまず感じたのは、著者たちの「子どもの血液培養・菌血症診療を楽しんで伝えたい」という熱意です。文体からも情熱がひしひしと伝わり、読んでいて心地よい一冊でした。
- 読みやすさと奥深さの両立
会話形式でキャッチーに導入しつつ、後半では「血液培養の判定基準」「コンタミネーションの防ぎ方」「臨床研究につなげる視点」など、奥深い話題もしっかり扱っています。専門書として十分なレベルの内容でありながら、ついページをめくってしまう魅力があります。 - コンタミネーションについての深い知見
子どもの血液培養では特に採血量や操作がシビアになりがちですが、本書では「なぜコンタミを避けないといけないのか?」という根本的な理由から、実際の手技まで丁寧に解説。「手袋は滅菌手袋が必要?」「ルート確保で採血してOK?」といった臨床現場でありがちな疑問に、エビデンス+実践知で答えてくれます。 - チーム医療とコミュニケーション
どんなタイミングで検査室に走るべきか、血培陽性が出たときにどのように対応すればいいかなど、臨床検査技師との連携で意外と見落とされがちなポイントまでしっかり言及。看護師の協力も含めて、多職種連携を学ぶ上でも大いに役立ちます。 - 緊張感がリアルに伝わるエピソード
採血が難しい子どもから何とか得られた5mlの血液が、ボトルに吸い込まれるときの切迫感やドキドキ感――こういったリアルな臨床感が随所に散りばめられ、読者が「あるある」と共感できるのも魅力です。
総評としては、“ニッチ領域を楽しむノウハウ”がギュッと詰まった一冊。単なるテキストブックではなく、読者の臨床推論やモチベーションを高めてくれる “学びのパートナー” と言えるでしょう。
4.おすすめの使い方・読み進め方
- ①まずは寸劇パートを楽しむ
- 研修医マッキーとこけつき先生、そしてカレツジ技師、ソノダの会話を読むだけでも、臨床の“あるある”が満載。肩ひじ張らずに読み進められます。
- ②気になるQ&Aを拾い読み
- 血培を「いつ」「どのくらい」「どんな方法で」採るか、具体的な疑問に応じてピンポイントで参照しましょう。辞書的に使うのも◎
- ③コンタミネーション防止や解釈のポイントをチェック
- 臨床現場で遭遇しやすいトラブルや悩みを解消。自分の施設の手技や方針と比較しながら読むと、さらに学びが深まります。
- ④スタッフ間の連携プロセスを再確認
- 看護師や臨床検査技師と共有したい項目は、必要に応じて付箋を貼っておくと便利。患者さんをチームで支える上での具体的なアクションが見えてきます。
- ⑤悩んだときに “立ち返る”
- 患者さんの経過がどうも合わない、血液培養の適応が微妙…などと感じたとき、本書を開けば「そういえばこういう悩みを取り上げていたな」と、解決の糸口が見つかります。
5.まとめ
『こどもの血液培養と菌血症 こけつきん11のオキテ』は、一見ニッチな領域に見えながら、実は日常的に直面する疑問を丁寧に解きほぐす “実践的ガイド” です。
子どもの菌血症診療のエッセンスだけでなく、チーム医療、感染症診療の総合力まで学べるのが最大の魅力。
可読性が高く、明日からの診療に直結するヒントが満載なので、特に小児科ローテ中の研修医や、PICU・NICUに関わる方に強くおすすめします。
6.医書レビュー
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<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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