記事・インタビュー

都会でのキャリアは大切だけれど、ずっとこのままでいいのだろうか――。そんなふうに考えたことはありませんか?
もし今、何かを変えたいと感じているなら、地方への移住も選択肢のひとつ。なかでも、『移住したい都道府県ランキング』で長年一位に輝く長野県は、自然に囲まれた環境のなかで、仕事のやりがいと生活の充実、その両方を叶えられる理想的な場所です。
今回の記事では、関東での消化器一般外科医から一転、長野への移住後に県庁職員へ転身した中山幹大さんをご紹介します。
関東で消化器一般外科医として活躍していた中山さんは、長野へ移住後、県庁職員へとキャリアをシフトしました。専門性にこだわるだけでなく、「環境を変えることで得られる成長」を大切にした選択です。自分の強みを活かしつつ、新しい分野にも果敢に挑戦する姿勢は、移住を考える人に大きなヒントを与えてくれます。
あなたも新しいキャリアを長野で描いてみませんか?
<お話を伺った方>

臨床から行政へ──長野で広がるキャリアの可能性
Q:これまで関東の病院で勤務されてきた中山さんが、長野への移住を決めたきっかけを教えてください

長野に来る前までは神奈川県内の病院やクリニックで勤務してきました。10年以上同じ地にいたこともあって、「そろそろ違う環境で働いてみたい」という思いが芽生えたことが、移住を考えたきっかけです。ちょうど前職での業務に一区切りがつき、年齢的にも40代後半を迎えて次のキャリアを考え始めていた時期でもありました。
長野は祖父母の家があり、子どもの頃から馴染みがあった土地なんです。また、趣味の登山やスキーを楽しめるという環境の良さにも惹かれ、長野への移住を決めました。
Q:長年従事された消化器外科医ではなく、県庁職員へ転身された経緯をお聞かせください
当初は病院勤務を前提に探していたんです。一方で、長年手術に携わっていたことで手首や目に不調を感じていたこともあり、「臨床といったん距離を置いてもいいかな」という思いも抱いていました。
そんなとき、長野県が医師向けに行っている無料職業紹介事業『ドクターバンク』の存在を知り、登録したところ、担当者から「県庁での仕事もありますが、話を聞いてみませんか」と紹介を受けたんです。まったく異なる世界の提案に最初は驚きましたが、話を伺ううちに「気分を変えて臨床以外の仕事にも挑戦してみようかな」という気持ちになり、応募したのがきっかけでした。
Q:入職後の勤務内容を教えてください
2024年10月から2025年3月までは、本庁と保健所の両方の業務を経験するために健康福祉政策課と長野保健福祉事務所で勤務していました。今年4月に北信保健福祉事務所へ異動となり、現在は保健福祉に関する地域イベントへの参加や、医療従事者を目指す学生の実習対応などを担当しています。また4月からは本庁の疾病・感染症対策課も兼務することになり、本庁の業務にも引き続き関わっています。
●中山さんの主な業務内容
【北信保健福祉事務所】
・所の管理、運営
・各種会議への出席
・医療従事者養成の学生実習
・保健福祉関連の地域イベントへの参加など
【本庁】
・感染症、災害関連の研修会への参加
・疾病・感染症対策課での業務
→各種会議への出席
→医師会との交渉
→県感染症対策に関わる事業への助言等
→感染症週報に関する業務など
Q:前職とは全く異なる職業に、戸惑いはなかったのでしょうか?
これまで手術室で過ごす時間がほとんどだったので、デスクワーク中心の仕事に変わったことは、まだ少し不思議な感覚です。WordやExcelは学会などで必要最低限のものしか使ってこなかった分、事務作業に必要なスキルが不足しているのではと感じることはあります。ただ、同僚のサポートのおかげで特別に苦戦したり大きくつまずいたと感じることは今のところありません。
前職との良い意味での大きな違いは、人との関わり方です。臨床では医師や看護師など、限られたメンバーとばかり仕事をしていました。ですが、今は保健師、薬剤師、臨床検査技師、獣医師、放射線技師、管理栄養士など様々な医療職の方々、さらには医療職ではない行政職の方々ともコミュニケーションを取りながら進めていく必要があります。その多様な関わりが新鮮で、とても楽しいです。
Q:前職の経験が活かせていると感じる場面はありますか?
医療に関して、行政の役割の一つとして、地域のニーズに沿った医療体制が構築できるよう医療機関側へ様々な情報を提供することです。しかし、医療機関側には経営面やマンパワーの課題など独自の事情も様々ありますので、行政や住民の意図通りに話が進まないことも少なくありません。
そうした中で、医療機関と行政や地域双方の立場を理解しているわれわれ行政医師が間に入り、双方の視点に立って調整を図ることは、この仕事の大きなやりがいの一つと感じています。
私自身、大学病院、市中病院、クリニックといった規模の異なる医療現場で勤務してきた経験があり、それぞれの医療機関の事情や考え方を理解している点は、現在の業務において大きな強みだと感じています。
Q:仕事をするうえで、中山さんが心がけていることはありますか?

僕はある意味においては、仕事ではこれといったポリシーっていうものがないんです。いろんな人たちと仕事をするうえで、自分の考えを押し出しすぎると衝突につながることもありますし、なにより今の立場では、仕事は自分のためにするものとは必ずしも考えていません。自分の考えというより、住民はどう考えるか、国や県はどう考えているか、今はそこを一番に考えています。臨床の時には患者さんのことを第一に考えてやっていましたがそれと同じです。今では県職員として与えられた仕事をやる、というスタンスです。
買い物に通勤、休日の過ごし方…。長野暮らしの実情は?
Q:地方は生活面が不便そう…、というイメージをもつ方も多いかと思います。実際に暮らしてみて、住環境はいかがでしょうか?
僕が暮らしている長野市内はスーパーが多く、日常の買い物に困ることはありません。さまざまな店が近場に揃っていて便利ですよ。
長野というと冬の積雪を心配する方も多いと思いますが、長野市街地は比較的雪が少ない地域です。冬の車通勤は今年が初めてですが、しっかり除雪されるのでそこまで心配はしていないですね。万が一の際には、電車通勤も選択肢に入れています。どうしても通勤できない場合には在宅ワークという選択肢もあります。
Q:通勤事情は以前と比べてどう変わりましたか?
本庁勤務のときは徒歩で通勤していましたが、今年4月に北信保健福祉事務所に異動してからは、車で約1時間かけて通勤しています。都会ほどの渋滞もなく、僕自身が運転を苦に感じないため、今のところ引っ越しは考えていません。
神奈川での通勤時間は40分ほどと今より短かったものの、満員電車だったのでストレスは大きかったですね。電車や新幹線の本数が少なくても、混雑しない今の環境のほうが、気持ち的に楽だと感じます。
Q:休日はどのように過ごされていますか?
趣味の山登りやスキー、温泉、ランニングを楽しんでいます。神奈川にいた頃は登山に出かけるのに3時間かかっていたものが、今は現地に着くまで1時間ほどと、休日の時間を有効に使えるのがうれしいですね。
長野県内だけでなく、たまに新潟や富山へ泊まりがけで出かけることもあります。自然や温泉が好きな方には、長野は本当におすすめの場所です。
Q:長野で働くことに関心はあるものの、あと一歩が踏み出せない。そんな先生にメッセージをお願いします
長野に特別な縁がなくても、生活には全く支障ありません。少なくとも都市部であれば、「通勤はどうなるのか」、「買い物する場所はあるのか」など、あまり深く考えすぎる必要はないと思います。都会が恋しくなったときも、長野市からであれば新幹線で1時間ほどで東京まで行けますしね。肩ひじ張らず、自分の興味のある場所にふらっと足を運ぶような感覚で、気軽に来てみるのもいいと思います。そして長野が気に入って、臨床以外の仕事も選択肢にあれば、長野県職員も候補の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。同僚も気さくな方が多く、仕事で困った際にもすぐに相談に乗ってもらえます。また行政や政治のことなど臨床とは違った世界を経験できることもまた新鮮です。視野を広げれば、これも医師だからできる経験の一つかもしれません。
長野県ドクターバンク
土日・祝日関係なく、全国どこへでも私たちが、お伺いします!!(オンライン相談可)
長野県ドクターバンクとは、
長野県が行っている、医師無料職業紹介事業です。
前回の概要編に引き続き、どのような支援を行っているのか、
ドクターバンクの担当者に伺いました。








長野県健康福祉部 医師・看護人材確保対策課
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