記事・インタビュー
民間医局が、専攻医・研修医・医学生におすすめ書籍を集めた「医書マニア」。
医学書を読むのが大好きな先生方より、医学書のレビューをお届けします。
レビュー:三谷雄己先生(踊る救急医先生)
感染症診療って、めちゃくちゃ考えないといけないことがある…発熱患者への対応や抗菌薬の選択…理論があやふやで自信が持てない…
感染症はどの診療科でも頻出のトピックですが、背景に応じてアプローチが変わるなど、実は想像以上に判断力や知識量が求められます。
特に初期研修医や若手医師にとって、
「この患者に合った抗菌薬の選択は正しいのか?」
「CRPが上昇しているけど治療方針は?」
といった疑問が尽きないはず。
尿路感染症や肺炎といった一般的な疾患から、免疫不全患者のレアな感染症までをバランス良く網羅し、確実な知識の土台を築くことが非常に大切です。
私自身、救急外来で頻繁に発熱患者を診療する際、感染症診療の基本理論をひととおり理解しているかどうかで迷いや負担が大きく変わると実感しています。
そんなとき、この一冊に出会いました。
本書を読むことで、感染症診療における「理論的思考」が身につき、日常臨床での迷いが格段に減ります!
合格点を取れる感染症診療ができるようになりたいすべての方におすすめする一冊としてご紹介します。
これからご覧いただく医学書レビューは、研修医時代からこれまでに100冊以上の医学書を読み、その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている、ある救急科専門医によるレビューです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、是非この一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!
- 書評『理論から攻める合格点の感染症診療』赤点を取らないための本質的な勉強ができます!
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
初期研修医や医学生をはじめ、普段から感染症を診る機会が多い内科系の医師、看護師・薬剤師などの多職種も含め、感染症対応の基礎を学びたい方
【推定読了時間】
3-4時間程度(上級者)、初学者なら数日かけてじっくり読んでもOK
本書は必要な感染症診療の基本理論を180ページとコンパクトにまとめた一冊。
忙しい方でもスキマ時間を活かせば短期で読了可能です。
2.本書の特徴
本書は、髙野 哲史 先生が執筆されました。
●感染症診療を「5つの要素」に分解し、理論立てて理解できる
●実際の症例や国試レベルの問題を活用し、実務と専門医試験対策の両面に対応
●専門用語は最小限、対話型の軽快な文章で初学者も理解しやすい
本書は「なぜそのアプローチをとるのか」をしっかり噛み砕き解説してくれるところが大きな魅力。
先入観で「この病名にはこの抗生剤」と丸暗記するのではなく、患者背景・感染臓器・原因微生物・抗菌薬選択・経過予測の5要素を使いこなす大切さを学べます。
●理論的な抗菌薬選択の方法
●問診・身体所見・検査による「感染臓器」の推論技術
●CRP値や培養検査結果などを踏まえた治療効果の評価・治療失敗の見極め
これらはいずれの診療科に進んでも必要になる基本的な感染症診療の思考プロセスです。
「上級医に抗菌薬の選択の方法を聞いて、なんとなく真似をする」だけでは身につかない本質的な理解が得られるでしょう。
3.個人的総評
本書の魅力はやはり「理論→症例→Q&A」という流れで知識を実践に落とし込める点です。
特に初学者にとっては、「患者背景からまずどこを疑い、どう薬を選び、どのように効果判定をするか」を体系的に学べるのが助かります。
症例問題で学んだ内容をすぐに臨床で試してみれば、「考え方の軸」がしっかりするので、当直や外来でバタバタしても落ち着いて対処できるようになるはずです。
一方で、「ある程度理解が進むと辞書的には使いづらい」という面もあります。
詳細な微生物学的解説やレアな感染症の網羅は薄めで、体系的な勉強の導入書と割り切って使うのが吉。
しかしそれを補って余りある実臨床に寄り添った丁寧な説明と具体的な症例が満載で、「感染症診療の土台づくり」には最適だと感じました。
「日常診療における感染症診療の迷いを減らす最強の入門書」といっても過言ではないでしょう。
4.おすすめの使い方・読み進め方
●ざっと全体を通読し、5つの要素の理論を理解
●症例問題に挑戦して自分の考えとすり合わせる
●定期的にQ&Aパートを振り返り、臨床に役立てる
●疑問が出たらガイドラインや追加文献で補足
まずは「理論編」をざっくり頭に入れてから、症例ベースの問題を解くと理解が深まります。
特に初期研修医なら、国試レベルの問題をトレーニングすることで、実践と専門医試験対策を同時に行えるのが嬉しいところ。
反復する際は当直や外来での実例と照らし合わせながら読み直すのがおすすめ。
「同じような症状だったけど、実際はどう診断したんだっけ?」と記憶をたどりながらページを開くことで、より身につきやすくなります。
5.まとめ
本書は、感染症診療を理論的に学びたい初学者にとって “最強の入門書” である!
本書は感染症診療に悩む医療従事者にとって、必携の参考書の一つです。
理論と実践を橋渡しする構成が秀逸で、今後どの領域に進んでも役立つ汎用的な思考プロセスを学べます。
国試対策だけではなく、日常臨床でもすぐに応用可能なのがポイント。
症例問題やQ&Aを通じて、“現場での応用力” を自然と習得できるはずです。
感染症診療で迷いを減らしたい、効率的に理論を習得したい方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊。
以下に要点や基本事項をまとめましたので、購入する際には参考にしていただければ幸いです。
6.医書レビュー
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<プロフィール>

三谷 雄己(みたに ゆうき)先生
救急科専門医
日本医師会公認健康スポーツ医
JATEC・ICLSインストラクター
立派な救急医を目指し、指導医の先生方に教えていただきながら日々修行させていただいています。
信念である「知行合一」を実践できるよう、臨床で学んだ内容をアウトプットすることで心掛けております。
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