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2017.03.17

患者・家族に寄り添う「在宅緩和ケア」の可能性

患者・家族に寄り添う「在宅緩和ケア」の可能性

今、注目される「在宅緩和ケア」。在宅緩和ケアとはどんなものなのか、何が必要なのかを確認してみましょう。

緩和ケアの考え方

緩和ケアとは、生命の危機にある病気において、生活の質を担保するために用いられる療法です。特にがん治療では、終末期を中心に緩和ケアが取り入れられており、場合によっては診断当初から緩和ケアを行うこともあります。
緩和ケアは、痛みを和らげるといった身体的アプローチだけでなく、精神的なアプローチも重視されています。がん治療をはじめ、以前は「症状を克服する」ことのみが治療の目的とされてきましたが、そうした身体的回復や現状維持のみを目的にした治療では、投薬や治療に苦痛を覚える患者も少なくありません。
緩和ケアではこうした精神的な面にも配慮し、患者の意を尊重し、より負担の少ない治療法をアドバイスする、といったことが増えています。

緩和ケアの種類とは

緩和ケアは大きく、「入院」「外来」「在宅」の3つに分けることができます。
「入院」によるものは、「緩和ケア病棟」などでの治療が中心となります。24時間体制の手厚い看護で安心できるというメリットは大きいですが、残された時間を慣れない場所で過ごすこと、家族と離れてしまうことなど、QOLが低下する可能性を考え、入院を逡巡する患者も少なくありません。
一方、「外来」や「在宅」の緩和ケアは、家で過ごしながら治療を受けられるメリットがあります。しかし、実際には「外来」で緩和ケアを受ける、という患者は決して多くはありません。終末期には外出自体が難しくなる場合が多いことや、一人暮らしで通院が難しいなどの事情がこの背景にはあります。高齢化が進み、独居世帯が増えている日本においては、今後もこうした患者が増えると予想されます。
訪問診療や訪問看護による「在宅」の選択肢は、こうした問題を解消するために期待される手段です。

チームで成り立つ緩和ケアのしくみ

さて、次に緩和ケアのしくみを確認してみましょう。
「入院」「外来」による緩和ケアの場合は、医師や看護師が中心となって緩和ケアが行われます。
一方、在宅の場合は、医師の診断・処方のもと、チームによって緩和ケアが行われます。患者一人ひとりの生活や状況に寄り添う必要があるためです。適切な治療のために、さまざまな専門家が患者に関わります。看護師・ケアマネージャーが重要な役割を果たすことが多いほか、介護職・リハビリ・薬剤師、そして家族なども含めた関係者がチームとなって対応します。
さまざまな専門家が携わることによって、患者にとってより良い治療を探れるほか、情報共有によって緩和ケアを円滑に行えるようになります。

需要があってもなかなか進まない在宅緩和ケア

緩和ケアについておさらいしましたが、実際のところ、「入院」や「外来」よりも「在宅」で治療を望む患者は少なくありません。慣れ親しんできた自宅で最後を過ごしたいと考える方が多いのは当然でしょう。
しかし、現状では「在宅緩和ケア」は需要があるにもかかわらず、まだ浸透していません。家族に身体的・精神的負担がかかるケースが多いことに加え、経済的な不安、受けられる医療が限られてしまう不安を訴える方も多くいます。ただ、ニーズの高まりに応じて、緩和ケアに力を入れる在宅診療所や訪問看護ステーションが増えています。
まだ緩和ケアを専門にする在宅診療医は少ないのが現状ですが、今後の体制整備が期待されます。
医師としても、在宅医療のニーズ増加や專門分化は、キャリア形成において注視しておくべき流れでしょう。

在宅における緩和ケア

在宅における緩和ケアは、潜在層も含めると大きなニーズがあると考えられます。医師で在宅医療に関心を持つ方は、注視しておくべき流れだと言えるでしょう。

最終更新(2016/10/31)
医師×訪問診療・在宅医

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