記事・インタビュー
2024年4月から「医師の働き方改革」がスタートします。これにより、医療機関は一般企業と同様に、雇用する医師の労働時間の徹底した管理を求められ、上限時間を超過した際の罰則も規定されるようになります。
本企画では「医師の働き方改革」について3,350病院を対象にアンケートを実施し、現状やこれからの対応について134病院よりご回答をいただきました。
医師の働き方制度改正への理解度
特に「宿日直許可」に関しては「理解している」という回答が過半数を占めています。「追加的健康確保措置」に関しては、他の項目に比べ「全く理解していない」との回答が多くなっています。
情報収集経路
(自由回答)
・事務長等、外部の個人的なネットワークからの情報(150~199床・北海道・東北エリア)
・グループ本部からの通知(150~199床・関西エリア)
・各団体の勉強会に参加して(200~249床・中国・九州・沖縄エリア)
・労働局より派遣されている社労士(150~199床・関東エリア)
・医療勤務環境改善支援センターからの情報(150~199床・関西エリア)
・医師会(100~149床・関西エリア)
・研修会による情報提供(300床以上・上信越エリア)
情報収集経路については、厚生労働省等の公的な情報が圧倒的に多い一方で、それ以外の経路でも自発的に情報収集する様子がうかがえます。特に医療勤務環境改善支援センターや社会保険労務士、病院団体等で情報収集しているとの回答もあり、積極的に情報収集をしていることがうかがえます。
働き方改革の推進度
病院内での働き方改革の推進度については、過半数の病院がで「進んでいる」、「ある程度進んでいる」との回答があった一方で、「全く進んでいない」との回答もあり、うまく進められている病院が多くある中でもなかなか進捗していない病院もあることがうかがえます。
現状把握
36(サブロク)協定についてはほとんどの医療機関において締結しているものの、「締結できていない」「わからない」との回答もありました。法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過する可能性が全くない場合以外は、労使協定(36協定)の締結が必要となります。
36(サブロク)協定とは
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過して労働者(医師)に時間外労働(残業)をさせる場合には、下記の2点が必要です。
・労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結
・所轄労働基準監督署への届け出
36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」などを決めなければなりません。
(https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/saburoku/)
常勤医師の勤怠管理 労働時間把握
■自院
■常勤医師の副業・兼業先
常勤医師の勤怠管理についてはほとんどの医療機関で進められている一方で、常勤医師の副業・兼業先での勤怠管理は進められていないという回答が約半数ありました。副業・兼業先での労働時間についても、本務先=常勤先が把握する必要があるため、医療機関では常勤医師の副業・兼業先での勤怠労働時間管理のも対応もを行う必要があります。
宿日直許可の取得状況
宿日直許可 は「申請予定・準備中」との回答が最も多く、次に「取得済み」、続いて次に「申請予定・準備が進んでいない」との順になっており、宿日直許可取得の動きが進んでいます。
宿日直許可の準備については、厚生労働省にて制度の仕組みや手続き等に関する相談窓口が設けられている他、都道府県の医療勤務環境改善支援センターでの相談受付も行われています。
働き方改革に関して困っていること
(自由回答)
・宿日直許可申請のために、常勤医師の当直を週1回以内、日直を月1回以内にするための医師確保(100~149床・上信越エリア)
・労基への提出書類が不明(100~149床・関東エリア)
・救急病院のため、日当直医師の対応に苦慮(常駐1名なので急な変更等)。今後、宿日直許可にあたり、勤務24時間以内や日直月1回迄の規制は厳しい。(50~99床・中国・九州・沖縄エリア)
・宿日直許可を取ったとしても、手当の削減はできないのではないか。(300床規模以上・関西エリア)
・当直医師等の派遣元である大学病院医局の考え方がどのようになるかが今後の課題である(100~149床・関西エリア)
・当院の医師について残業はほとんどないが、宿直をお願いしている外部(非常勤)医師がいるため許可が必要になると思うがまだ調べたり、まったく手付かず状態である。(150~199床・上信越エリア)
・担当者1名。情報収集や作業がすすまない。申請までのスケジュールを作成できていない。(100~149床・北海道・東北エリア)
「宿日直許可の取得」、「医師の人材確保」に困っているとの回答がともに約半数と多く、その他「医師の副業・兼業の管理」、「医師以外の人材確保」との回答も2割に上ります。
まとめ
「労働時間勤務時間把握管理 」や「宿日直許可の取得状況」 に関して、取り組みを行ったもしくは行う予定だとの回答が7割以上に上る一方で、追加的健康確保措置の理解や副業・兼業の把握等、運用方法について現状行政からの具体的な指示がなく、医療機関に対応が任されている部分に関しては、やはり対応が進められていない状況がうかがえました。
アンケート概要
■調査期間:2022年11月8日~11月23日
■対象:3,350施設
■回答数:134施設
■各施設の病床数
■エリアごとの施設数
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