記事・インタビュー
北海道日高郡新ひだか町にある医療法人徳洲会日高徳洲会病院。前身の医療法人静仁会静内病院を経て、2018年に誕生しました。開設以来、「健康と生活を守る病院」を目指し、病院が建つ静内地区を含む、日高振興局の医療を守って来ました。今回は日高徳洲会病院の特徴や2025年新築OPENに向けた想いや、開設に向けて準備を進めている井齋偉矢院長と永井司事務長にお話ししていただきました。
<お話を伺った人>
井齋 偉矢(いさい・ひでや)
1975年北海道大学医学部を卒業。北海道大学第一外科に所属し研鑽を積む。1988年にはオーストラリア国立肝移植ユニットにて常勤医として肝移植の臨床に携わる。1991年社会医療法人北海道恵愛会札幌南一条病院では外科医長を務め、1996年JA北海道厚生連鵡川厚生病院院長、2001年新冠町国民健康保険病院外科医長を経て、2007年医療法人徳洲会日高徳洲会病院(旧医療法人静仁会静内病院)院長に就任。現在に至る。
【専門・認定】
日本東洋医学会専門医・指導医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会代議員・北海道支部幹事、日本東洋医学会EBM特別委員会委員、サイエンス漢方処方研究会理事長
<お話を伺った人>
永井 司(ながい・つかさ)
札幌市内のホテルで法人担当の営業に従事。2002年に札幌東徳洲会病院に入職し、医療業界へ転身。2022年に医療法人徳洲会日高徳洲会病院に入職し、事務長に就任。
Q:まずは井齋院長のこれまでのご経歴と、医療法人徳洲会日高徳洲会病院の特徴について教えてください。
井齋 院長
北海道に生まれ育ちで、幼少期からとにかく難しいことにチャレンジしたい想いが強く医師を目指し、北海道大学医学部に入学しました。北海道大学第一外科で経験を積んだ後、オーストラリア国立肝移植ユニットで肝移植の臨床に携わりました。帰国後は、南一条病院の外科医長、鵡川厚生病院の院長などを経て、現在の日高徳洲会病院の院長に就任しました。
当院は、浦河赤十字病院と共に日高振興局の医療を担っており、特徴のひとつとして私が提唱する科学的根拠に基づいて漢方の処方をする「サイエンス漢方処方」があります。漢方薬を救急・急性期医療でも積極的に取り入れ、成果を上げています。
Q:院長が漢方に興味を持ったきっかけを教えてください。
井齋 院長
外科医として第一線でキャリアを積んでいるときに、アレルギー性鼻炎で抗ヒスタミン薬を服用したところ、副作用で涙も唾も出ない状態になり、その時に漢方で症状が改善した経験から興味を持ったことが最初のきっかけです。特に自分に指導してくれるような先生はいなく、独学で漢方を学び、2012年に「サイエンス漢方処方研究会」を立ち上げ、以来理事長を務めています。当院は日本東洋医学会漢方専門医の研修施設でもあり、全国から医師が勉強しに来ています。
Q:日高徳洲会病院は研修プログラムが評判ですが、どのような内容なのでしょうか。
井齋 院長
まず、研修医らが一つの科でまとまって研修をするため、絆が生まれやすい他、研修医がすぐに主治医となり、入院から退院、家族への説明も行なっているため、研修病院ではできない体験を出来るのが当院の特徴です。徳洲会グループの医療機関だけではなく、その他の医療機関からも地域医療研修の医師を受け入れています。医師だけではなく、看護師含めたコメディカルも研修医に対して温かく迎え入れる準備もできている為、満足度が高いという声も聞きます。
ほかに、日高は競走馬の産地ですので、地域の文化を知るため競馬場に行ったり、研修医と医師の親睦を深めるため食事会を設けたりしています。そういったことも含めて、研修を終えた医師からは満足度が高いという評価をいただいています。
漢方を学びたいという医師も多く研修に来ており、現在も2名の医師が資格取得に向けて研修中です。東洋医学会の指導医は道内に2、30名ほどいるのですが、ほとんどが皮膚科、眼科などの専門医ですね。当院は様々な患者を診られるので、症例が限られず経験を積むには好環境だと思います。
Q:お休みの日はどのようなことをされていますか。
井齋 院長
音楽を聞くのが趣味です。好きなアーティストはSEKAI NO OWARIやbacknumber。ファンクラブに入っていて、ライブにも足を運びます。どちらもボーカル力がありますし、歌詞の世界観が個性的で好きですね。
Q:では最後に、2025年設立予定の新病院について教えてください。どういった点に新病院の特徴はありますか。また、今後どのような医師を求めているのでしょうか。
井齋 院長
今までの徳洲会グループの病院にはなかった地域のコミュニティスペースを設けます。開放的な空間で、患者以外の方も気軽に立ち寄れます。急性期病床60床は全て個室にするなど、これまでにない医療機関に生まれ変わります。またIT環境も整備し、メタバースを積極的に取り入れていく予定です。日高地区は和歌山県と同じくらいの面積に、約6万5千人しか住んでいません。家から病院までの距離があり、通院が困難な人が多くいます。このような土地にこそ、メタバースは有効に機能していくと考えています。オフラインとオンライン、どちらも新しいことに挑戦していくことで、日高徳洲会病院が今後の徳洲会グループのモデルケースになっていくのではないでしょうか。
10年・20年先を見据えた必要とされる病院にしていきたいと考えています。今後、強化したいのは整形外科と泌尿器科、また外科対応も可能な総合診療科なども必要です。この地域は高齢者の方が多いのですが、当院では整形外科の手術ができません。泌尿器科も今は週に一度、非常勤医師に来てもらっていますが、需要を考えると常勤で配置したいところです。
当院のあるエリアは北海道でも太平洋側でもある為そこまで雪も多くは無く、札幌と比べても気温も高く、皆さんの思っている北海道のイメージとは少し違います。道内だけではなく現在は九州から来ている先生もおり、月2回は帰省費用も支給しています。
Q:永井事務長のご経歴を教えてください。
永井 事務長
私は元々、ホテルマンでした。札幌市内のシティホテルで法人営業を担当し、そこから2002年に札幌東徳洲会病院に転職して医療業界に入りました。そこでのミッションは、医局の立て直しと研修医を集めることでした。当時は臨床研修病院に指定されたばかりで、先生方も医学生の指導に不慣れでしたので、実習中に途中で帰ってしまうケースが発生していました。その状況を改善しようと、総務との兼務を医局中心の業務に変更して身分を医局に異動致しました。当時の徳洲会グループでは事務系が医局に席を置くこと自体がかなり珍しいケースでしたが、現在では多くの臨床研修病院が専属の事務を配置して医師・研修医対策をしております。
私がマンツーマンで実習中の医学生を担当することにした事が結果としてこの方法が功を奏し、指導医、医学生たちの評価が上がりました。指導医の先生方も研修医が集まることで負担が減り、業務効率が上がることに気づいてから、指導にも力を注ぐように変わりました。2004年の初期臨床研修制度スタート時は5名の研修医でしたが、現在は定員11名で北海道では有名な臨床研修病院になりました。その後、私は2022年4月に日高徳洲会病院に移りました。
Q:日高徳洲会病院では、研修医や医師たちとどのようにコミュニケーションを取っていますか。
永井 事務長
2年間、研修を続けている内にメンタルが落ち込んでしまう時は少なからずあるのです。札幌東徳洲会病院ではそのような時に寄り添ってあげたいといつも考えていました。現在の病院でも毎日、医局に顔を出して、積極的に声を掛けて何かあったらすぐに相談できる環境にしています。私は先生たちのカウンセラーなんだと思って接しています。
Q:日高徳洲会病院がある日高地区の特色と、新病院への思いを聞かせてください。
永井 事務長
北海道の中では穏やかな気候で、住人も優しい性格の人が多い印象です。当院で勤務する職員も同様で、院内の雰囲気がとても和やかです。2時間以内で札幌に行けるので、休日にはショッピングや観光も楽しめる住みやすい町です。
新病院は非常に規模の大きい施設になります。新ひだか町を含めた日高管内全体の医療を守っていかなければいけません。地域の医療を支える病院の実現に向けて、今はしっかり準備を進めていきたいです。
新病院 完成予定イメージ
井齋 偉矢、永井 司
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