記事・インタビュー

2022.01.07

元MR医師が伝える多職種とのかかわり方 ~失敗から得た連携のコツ~

元MR医師が伝える多職種とのかかわり方 ~失敗から得た連携のコツ~

元MR医師の福山 俊彦先生に多職種にかかわる方法として、いかにスムーズに「情報」の受け渡しが必要なのかを失敗から得た連携コツについてお話しいただきました。

<お話を伺った方>

福山 俊彦(ふくやま・としひこ)
1995年に九州大学農学部を卒業後、九州大学大学院農学研究科に進む。
大学院ではバイオテクノロジーの分野で遺伝子操作動物を用いて食事成分と疾患との関連などについて研究し、その後、1997年からファイザー製薬でMRとして約10年間従事した。
MRとして働く中でMRとして素晴らしい薬をみんなに使ってほしいという意識と、それでも使えない人もいるというギャップを感じ医師になることを決意した。
2011年に愛知医科大学に入学し、初期研修は神戸労災病院で研修を行った。
現在は消化器内科を専門として、兵庫県神戸市北区の医療法人社団 一秀会 春日病院にて副院長として勤務している。

Q:近年、「多職種連携」という言葉をよく聞きますが、まずこちらの意味や必要性について福山先生はどのようにお考えですか?

福山 俊彦先生

多職種連携とは「情報」で、つまり私自身はいかにスムーズに「情報」の受け渡しができるかどうかだと捉えています。

一番有名な共通のツールとして“電子カルテ”がありますが、自分たちの言いたいことが他の職種の方に共通言語として伝わらなければいけません。直接、聞かれたことに対して一言、二言で返すこともありますが、そうすると真意が伝わらない。そのため、なぜ処方・対応をするのかを書くことのできるカルテの中できちんと意思伝達ができることが多職種連携では必要です。

また、病棟にはこまめに向かって、声をかけてもらえるような環境を作ることは多職種の連携をスムーズに行うためには必要なことだと思います。

Q:福山先生が研修医のころに多職種連携で悩んだことはありましたか?

私が一般の社会人(MR)を経験したからだと思いますが、PHSの電話一言で終わる話しを「直接会って真意まで伝えなくては」と思い込み過ぎており、1つを伝えるのに時間をかけすぎてしまっていました。

周りの上級医や看護師さんにはいつも怒られました。さらに1つ1つの仕事に時間をかけすぎて、どんどん仕事も溜まっていって…今考えると非常に悪循環だったなと思います。きっと要領が悪かったのですね。それが積み重なって「怒られやすいキャラクター」になってしまいました。

Q:そんな悪循環からどうやって抜け出したのでしょうか。

福山 俊彦先生

まず、情報をどう伝えるべきか、そして指示命令系統を理解するようにしました。誰に連絡したらスムーズにいくのか、その手段はどうするべきかを考えて行動するうちにスムーズに仕事ができるようになりました。

あと、これは今の研修医も言えると思いますが、やはり研修医のころは上の立場の人に連絡するときは構えて躊躇してしまいますよね。この状況も「連絡取れなくても、コールバック来るでしょう」くらい軽い気持ちで連絡するとやりやすくなりました。

あとは、電話だけではなく、状況に応じてメールやチャットも利用して連絡したり、わかりやすく端的に結論から伝えたりすることでより連携がうまくいくようになったと思います。

Q:今は春日病院の副院長と立場が変わりましたが、多職種連携で意識していることはありますか?

立場が変わり、一番にスタッフを大切にしなければと意識が変わりました。

勤務医ももちろん同じですが、指示系統の中で「医師の指導の下」行わなければいけないものが多くあります。だからこそ、みんなが動きやすいように責任の所在を明確にして、ただ指示を投げるだけではなく、自分自身に責任がある仕事はできるだけ早く対応するようにしています。

責任の所在が自分にあるということは、何か困って多職種の方は連絡をしてきているわけで、その意識は勤務医のころから持っていましたが副院長という経営をする立場になってより強く意識するようになりました。

Q:スタッフの方への指示出しの際、具体的に行っている工夫はありますか?

なるべくスムーズに指示出しをするために、指示だしの内容を定型化しています。指示を定型化することで、「こういう患者さんが来たらこれ」とすぐに指示を出せます。

指示がある程度定型化されると、看護師さんたちの初動もスムーズにいきますし、その後、患者さんに応じて細かい部分を手直しするだけなので自分の負担も減ります。

自分たちが躓いたら、看護師さんたちはもっと動きが遅れてしまうし、患者さんへ届くのはそれ以上に遅れが出てしまうので、始めの指示はすぐに出せるように意識をしています。

あと、既にそれはやっているよと思われる方もいらっしゃると思いますが、ただ定型化するだけでなく、そのフォーマットを作るためにはなぜその指示を出すのか自分自身でしっかりと理解していなければいけません。

Q:最後に、研修医の先生方へメッセージをお願いします。

福山 俊彦先生

伝えたいことは2つあります。

1つ目は「わからないことを聞ける場所」を作ってほしいです。

自分の中でとことん調べてもわからなければ、それはどこまで考えてもきっとわからないことです。それを怒られてしまうかもしれないと心の中にため込んでしまうと、どんなに優秀でもふさぎ込んでしまいます。同じ科の先生では無くても聞きやすい先生にとにかく聞いてみる、それも難しければSNSなどで聞いてみてもいいかもしれません。私もコロナ禍になってtwitterを改めて使い始めましたが、ほんとにすごい先生と繋がれたりして驚くことが多いですね。

2つ目は「ちゃんと休んで」ということです。

ある日突然、「医師」になって責任もすごいし、自分で考えなければいけないし、周りに指示も出さなければいけない。急にすごく責任のある立場になってしまうので、できるだけ時間のある時にしっかりと休んでもらいたいです。働くだけが仕事ではないのですし。

福山 俊彦

元MR医師が伝える多職種とのかかわり方 ~失敗から得た連携のコツ~

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