記事・インタビュー
医師のキャリアプランとして、製薬業界での勤務もあることをご存知でしょうか。より有用な治療薬を開発するため、また医薬品に関する最新の情報を的確に提供するために、医師の専門性が必要とされます。全世界の多くの患者さんの医療に貢献できる遣り甲斐に加え、ワークライフバランスの充実も可能です。
今回は、製薬業界で長く勤務し、現職にて多数の医師を製薬業界に紹介した実績を持つヒューマンダイナミックス社の堤康行氏に、メディカルドクターの業務内容、各社の求人情報、また現在製薬業界で活躍されているメディカルドクターの実例について紹介いただきます。
<プロフィール>
製薬業界で勤務するメディカルドクターの業務について
メディカルドクターが活躍する主な部門は、以下の3部門になります。
- 1. 臨床開発部
- 2. 安全性情報部
- 3. メディカルアフェアーズ部
それぞれの部門の役割と、所属するメディカルドクターの主な業務内容は次のとおりになります。
1. 臨床開発部
規制当局(PMDA*2)が要求するさまざまな承認要件を満たしながら、臨床試験(第1相から第3相試験)を企画・実施し、製造販売承認を取得する業務などを担います。
所属するメディカルドクターは、臨床開発チーム内の中心メンバーとなる医学専門家として、下記業務を主導する。
- 開発戦略の策定
- 試験デザイン、臨床試験プロトコールの作成
- 試験結果の公表
- 各種コミュニケーション
- ・KOL*3 、治験責任医師との協議
- ・規制当局との薬事承認のための交渉
- ・社内関連部署との連携
2. 安全性情報部
治験薬や市販後の医薬品における有害事象(副作用)情報を収集し、その内容を評価・報告する業務を担当する部門です。
所属するメディカルドクターは、医学的観点から、臨床開発部およびメディカルアフェアーズ部等と協働し、以下の議論をリードする。
- 安全性(有害事象)情報の評価(因果関係、重篤度の判定)
- 安全性監視活動(市販後調査等)の立案、実施
- リスク最小化計画(医薬品リスク管理計画書、適正使用資材等)の立案、実施
- 集積された安全性情報の評価、規制当局への報告、安全性報告・添付文書の作成・改訂
3. メディカルアフェアーズ
自社製品の価値を医学・科学的観点から最大化するために、最新の医学・薬学情報を医療機関に提供する業務を担います。
所属するメディカルドクターは、主に以下の業務を担当する。
- 育薬戦略の企画・立案を担当
- アンメットメディカルニーズの同定
- エビデンス創出(承認後臨床試験、第IV相試験、データベース試験など)
- MSL*4の指導、サポート
- 各種コミュニケーション
- ・KOLとの情報交換
- ・学会、専門家会議の運営等
各社の求人情報(2023年12月12日時点)
製薬業界各社の求人状況について、現時点では以下のような募集があります(募集会社および求人情報は都度更新されます)。
臨床医から製薬会社へ転職された医師の例
20~30代で、製薬会社へキャリアチェンジされた先生の事例をご紹介します。様々なキャリアをお持ちの先生が、どのような背景で転職をご決断されたのか解説していますので、製薬会社での勤務をご検討中の方は、ご参照ください。
A医師(製薬会社入社時:27歳)
リウマチ内科専攻医として基幹病院で勤務されていたが、ご自身のキャリアプランとしては臨床診療の経験として4年を一区切りと考えられていたことから、製薬会社への転職活動を開始。しかし、臨床での経験が浅いとの理由でMSL職を打診され、それに同意されて外資系製薬会社のメディカルアフェアーズに入社された。入社後はMSLとして担当領域の専門知識と製薬会社での勤務に必要な知識を習得。入社半年後には海外本社での勤務も経験。帰国後はメディカルアフェアーズのメディカルドクターとして活躍されています。
B医師(製薬会社入社時:33歳)
内分泌代謝疾患全般の臨床診療に加え、臨床研究や臨床試験へも参加されていたことから創薬に興味を持たれ、また海外での活躍も希望されていたことから糖尿病専門医の取得を機に製薬会社への転職活動を開始。これまでの臨床治療の経験を活かしていち早く戦力になりたいと考えられ、内資系製薬会社の安全性情報部にセーフティーフィジシャンとして入社されました。
C医師(製薬会社入社時:36歳)
循環器内科として臨床診療に従事されていましたが、1歳のお子様の育児との両立のため内資系製薬会社に入社されました。製薬会社での勤務についてはかねてより興味をお持ちで、情報収集をされていました。また中高校時はUSで過ごされており、得意の英語力も活かし、メディカルアフェアーズ部門においてメディカル・育薬戦略や各種活動の業務で活躍されています。
D医師(製薬会社入社時:37歳)
腎臓内科医として約8年にわたり臨床診療に従事された後、USの大学の公衆衛生大学院に入学し公衆衛生学修士を取得。その後も同大学の糖尿病センターで研究者として臨床研究に携わられました。帰国後は厚生労働省の医系技官として治療に関する政策に取り組まれていましたが、任期満了に伴い、習得された疫学や統計解析の知識を活かせること、日本でも臨床研究を継続して実施したいとのお考えより、外資系製薬会社へ転職。現在は臨床開発部門のグループマネージャーとして活躍されています。
製薬業界でのメディカルドクター職は、ワークライフバランスとともに遣り甲斐のある勤務です。キャリアの選択肢の1つとしてご検討いただいてはいかがでしょうか。ご興味がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。豊富なご紹介の経験を有するコンサルタントがご対応させていただきます。
参考
*1 CRO(Contract Research Organization、医薬品開発受託機関):製薬会社が医薬品開発の為に行う臨床試験などの業務を受託・代行する企業
*2 PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency;独立行政法人医薬品医療機器総合機構):医薬品、医療機器や再生医療等製品等の「承認審査」および「安全対策」ならびに「健康被害救済」の3業務を行う機関
*3 KOL(Key Opinion Leader):医療業界で多方面に影響力を持つ医師
*4 MSL(Medical Science Liaison):医学・薬学的なエビデンスや高度な専門知識をもとに、医薬品の情報提供を行う職種
株式会社ヒューマンダイナミックスが仲介している具体的な求人情報を知りたい先生や、ご質問のある先生は「民間医局」がお手伝いをさせていただきます。お気軽にお問い合わせください。
堤 康行
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